馬という生き物は、人類の歴史においてどんな役割を果たしてきたのだろうか。筆者は、馬はどうして家畜化できたのか、馬の利用による移動範囲の拡大・移動時間の短縮が世界をどう変えたのか、騎馬遊牧民族国家が東西文明へどんな影響を与えたのか、現在の人と馬との繋がりは、など、古代から現代まで連綿と続く人と馬との関係を多角的に探っていく。
簡単に言えば、「馬とめぐりあったおかげで、おそらく人間の文明は、数百年、あるいは数千年も、速く進展しただろう」ということを、時代ごとに例を挙げながら説明している本。
内容で特に興味深かったのは、匈奴、フン族、突厥、モンゴルといった騎馬遊牧民族が、ユーラシア大陸の東西にあった大国家に対してどんな影響を与えたのか、というくだり。中央アジアに覇権を唱えた騎馬民族という存在に焦点を当てながら世界史を見ていくと、人や文化が、西から東へ、東から西へと、波紋のようにユーラシア大陸全体で連動して動いていたことがよく分かる。ヨーロッパだけ、中華だけ、で世界史を見ていては分からない大陸全体でのダイナミックな躍動が見えてくる視点であり、これはとてもおもしろい視点であると思った。
難を言えば、文章が教科書的でやや堅苦しく、あまり読みやすくはないことか。そうページ数のある本ではないのだが、読み終えるのになかなか根気が要ったのが残念。