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馬のことについていろいろと。

第31回マイルチャンピオンシップ回顧

 

 

 

 第31回マイルチャンピオンシップを制したのはダノンシャーク。道中は中団を追走、直線で馬群をさばいて伸びてくると、最後はフィエロとの壮絶な叩き合いをわずかハナの差で制してみせた。

 

 

 ダノンシャークの今回の勝利は、コーナーで内を回ってこられたのが大きかった、岩田騎手の好騎乗である、というのが世間の評価のようだ。確かに、私が見たところでもコーナーでの内外の差は結果に大きく影響したように思える。コーナーで外を回った4着トーセンラーや6着グランプリボスは、ダノンシャークとポジションが逆だったら勝者になっていたかもしれない。

 

 そして、ダノンシャークが今回のレースで取れたコース取りは、岩田騎手の手綱捌きによるものだけではなく、運に恵まれた部分もあっただろう。枠がもう少し外だったら? 直線でミッキーアイルが内によれずに前が開くのが遅れたら? ダノンシャークは果たしてそれでもGI馬になっていただろうか? おそらくそれはノーだと思う。

 

 

 それでは、ダノンシャークは単に幸運だっただけなのだろうか?

 

 

 しかし、それは断じてノーだ。今回のダノンシャークは、本当に本当に強かったのである。天から零れ落ちてきた一生に一度かもしれない幸運、それをしっかりと掴めるのは、それを掴むに足りる力を持っているものだけだ。ダノンシャークが幸運に恵まれていたとしても、前が開いた一瞬を逃さず抜け出せる脚がなければ、最後に並んだフィエロを競り落とせるだけの気力がなければ、勝ったのは別の馬だっただろう。今回ダノンシャークが見せたのは、力のない馬には決して見せることのできない、眩い本物の輝きだったのだ。耐えて耐えてようやく訪れた万に一つの幸運を逃さず捉えた、勝利者たるにふさわしい馬の、堂々たる見事な勝利だったのだ。なかなか大輪の花を咲かせられなくとも、努力も辛抱もこうしてちゃんと実を結ぶことは確かにある。

 

 

 第31回のマイルチャンピオンシップ。その勝ち馬は、幸運で強い、見事な新王者であった。