umaseikatsu

馬のことについていろいろと。

第34回ジャパンカップ回顧

 

 

 

 

 第34回のジャパンカップを制したのはエピファネイア。掛かり気味に先行しながらも直線で鋭い脚を使って抜け出し、最後は2着のジャスタウェイに4馬身の差をつけての快勝となった。

 

 

 今回のエピファネイアの手綱を取っていたのは、主戦の福永祐一騎手ではなく、C.スミヨン騎手だった。福永騎手がジャスタウェイに乗ることを選んだための乗り替わりだったが、スミヨン騎手は、パドックからだいぶカリカリしていたエピファネイアをギリギリのところで折り合わせ見事エピファネイア菊花賞以来の勝利をプレゼント。一方の福永騎手は、手綱を手放したほうの馬に敗れての2着、という悔しい結果となってしまった。

 

 

 これを受けて、インターネット上では福永騎手の技量を低く見るような意見も多く見受けられた。福永騎手で勝てなかった馬が乗り替わったとたんにこの圧勝劇だから、それは一見すると正しいようにも見える。

 

 

 しかし、それは本当に正しいのだろうか。

 

 

 今回の福永騎手の騎乗はどうだっただろう。中団の内を追走し、直線の入り口で馬場のいいところへとスムーズに馬を持ち出す。ジャスタウェイエピファネイアを捉えられるほどの脚を使えなかったために2着に敗れたけれど、ほぼパーフェクトといっていい騎乗。エピファネイアを御したスミヨンも見事だったが、こと騎乗内容については福永騎手はスミヨンに決して劣ってはいなかった。

 

 また、先週のマイルCSでも、福永騎手は、フィエロをロスのない競馬でハナ差の2着に持ってきている。まあ、ここで勝ったのが前走で福永騎手が乗って1番人気で7着だったダノンシャーク、というのがついていないところなのだけれど、少なくとも福永騎手のマイルCSでの騎乗もケチの付けようのない好騎乗であった。

 

 このところの福永騎手の手綱捌きを見る限り、彼の騎乗技術が未熟だということはない。ここ2週のGIの負けは運が彼のほうに向いていなかったとしか言いようがないし、そもそも今回勝ったエピファネイアはこれまで福永騎手が手塩にかけて育ててきた馬なのだ。

 

 

 もちろん、福永騎手にもまだ足りない部分はあるだろう。横山典騎手や武豊騎手などが時折見せる「そう乗るのか」と驚かせるような戦法での勝利というのは福永騎手には少ないし、そういうリスクの取れなさ、みたいなのが大舞台でのあと一歩足りない部分に繋がっているのかもしれない。

 

 しかし、それでも、最近の福永騎手はきっちりとした仕事をしている。それを見ずして「福永騎手は・・・」と言ってしまうのは、きっちりとした仕事をしている人への失礼な評価であり、それは福永騎手だけでない騎手全体への失礼に当たる行為だろう。

 

 

 仕事内容をきっちりと吟味しよい仕事には賞賛を送る、ということが、命を賭けて競馬をしている騎手に対して私たちが取るべき礼儀であるはずだ。第34回のジャパンカップ、私たちがするべきなのは、スミヨン騎手にも、そして福永騎手にも、その見事な騎乗に対して惜しみない拍手を送ることではないか、と思うのである。